
金沢市足軽資料館 清水家 ◆足軽の家に代々伝わる恐ろしい作法(怖)を公開
2020年08月24日

長町武家屋敷跡の外れにある金沢市足軽資料館。
以前このブログで取り上げた時は、足軽の実態と屋敷の大まかな概要について解説しました。
今回は館内の様子について詳しくレポートします。

まずは構成から。
こちらの資料館は2棟の建物から成っていて、手前右側が清水家、奥左側が高西家。
どちらも復元ではなく、バリバリ本物の足軽屋敷です。
清水家は平成2年、高西家は平成6年と、比較的最近まで人が住んでいて、平成9年に現在地に移築して資料館として整備されました。
なので何て言うかね、まだなんとなーく生活感みたいなのが残ってんですわ。
これ住もうと思えば住めるんでね?みたいな。

では清水家から見て行きましょう。
入口はこんな感じ。
格子の入った引き違い戸に土間。
今じゃ料亭にでも行かないと見かけないような、純和風なエントランス。
建物は切妻屋根という簡素な造りで、屋根材は板葺きになっています。
画像じゃ分かり辛いですが、その板の上には重しに石を置いてあって、風で飛ばされないようにしてあります。
この屋根はどうでしょうね?
平成まで板葺きのまま使われてたって事は考えにくいので、ひょっとしたら移築の際に瓦葺きから板葺きにリフォームされてるかもしれません。
元の姿を知らないので、その辺りの詳細は不明ですが。

邸内の間取りはこうなっています。
入口入ってすぐが玄関の間。
お客さんはここを通って奥の座敷へと通されます。
この玄関→座敷までが接客空間。
その右側、流し・茶の間・納戸・鍵の間が生活空間です。
基本、ここにお客さんが立ち入ることはありません。
家の者がメシ食ったり、寝たり、内職したり、とそんな目的で使われていました。

こちらは座敷。
迎賓スペースですね。
部屋右側にはちゃんと床の間がしつらえられ、掛け軸が飾られています。
掛け軸の画は天神さま、つまり菅原道真。
加賀藩藩主の前田家はこの道真に連なる家系なんだそうで、ここに天神さまの掛け軸を飾るって事は、イコール藩主へのオマージュを意味します。
とは言っても、この掛け軸はあくまで展示用の小道具。
江戸時代にここにどんな掛け軸が掛けられていたかは、もう誰にも分かりません。
意外と物置になってたかもしれんしね(笑)。

その横にあるのが納戸。
なんか物置っぽいですが、実際物置としての用途もあったそうです。
主な役割は居住空間。
居間であり、夜は寝室でした。
スペース的にはそんなに広くなく、どうでしょうね、大人4人横になればいっぱいいっぱいって感じ。
家族みんなで寝起きするにはちょっと狭いですね。

そこで拡張されたのがこちらの鍵の間です。
ここは増築と考えられています。
納戸だけでは不足する生活空間を補うスペースとして付け足されたのです。

ここに面白い展示がありまして、清水家に残る古文書が公開されています。
養子縁組の書類とか、家の由緒書きとか、剣術指南書とか色々あるのですが、その中のひとつに「介錯巻之外口伝覚書(かいしゃくまきのげくでんおぼえがき)」ってのがあるのですよ。
これ何かと言うと、切腹の際に首を切り落とす『介錯』、あれの作法が書かれているんですね。
マジっすか!?って感じだけど、これも足軽の大事な仕事だったそうで。
本番を迎えた時に間違いのないように、こうして手順書としてまとめられていたのです。
なんちゅー家伝書じゃ。
足軽、怖ぇぇ~~~~~!!!!!(震・震・震)

こちらは茶の間。
今で言うダイニングですね。
並べられているのは箱膳。
箱膳ってのは食器類を収めた箱で、ひとりにひとつ割り当てられます。
食事の時にはここから茶碗と箸を出し、箱は蓋をしてそのまま台にして使います。
質素ですね。
現代ではテーブルを囲んで大皿を並べて各自好きなおかずを取るってのが一般的だと思いますが、江戸時代の食事風景はそんな感じじゃなかったようです。
きっと兄弟間で繰り広げられる壮絶なおかずの取り合い戦争もなかった事でしょう。
ある意味平和~な時代でした。(←?)

流しにはかまどとかの調理設備や道具類。
やけにさっぱりしてますが、本当はもっとごちゃごちゃした空間だったでしょう。
家の中にかまどがある生活ってどんなだったんですかね?
かまどがあるって事は当然火をたく訳ですから、室内にも多少は煙が流れ込んだはず。
もちろん排煙の設備はあったでしょうが、今みたいに換気扇なんかないし、それなりに臭いがこもったでしょう。
きっと家の中はすすで汚れまくったんでしょうね。

藩政期の足軽の生活の様子を今に伝える足軽屋敷清水家。
リアルな江戸期の建物だけに、臨場感満点です。
ここでこんな風に過ごしてたのかなー?とか、ここでこんな生活が営まれていたのかなー?とか、色々想像しながら隅から隅までじぃーーーと観察していってください。
次回はお隣の高西家を見ていきます。
基本構造は清水家と同じですが、あちらはあちらでまた色々な面白さが詰まってて見所一杯。
その辺り、細かーく見ていきます。
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