
清澄山 西養寺 その2◆鐘楼に隠された神秘の仕掛けに気付けるか?
2020年08月19日

卯辰山寺院群を構成するお寺のひとつ、西養寺(さいようじ)。
前回は色んなツッコミ所(←?)を見てきました。
今回は一番の見所である本堂と鐘楼を見て行きます。
ここはイケてますゼ!

まずはいきなりメインの本堂から。
この建築が素敵なのです。
特に軒下部分のデコレーションがもう異次元。
下地は白漆喰。
その上に貼り付けられている部材、縦の部材を束(つか)、横の部材を虹梁(こうりょう)と呼ぶのですが。
このバランスと配置そして装飾がスーパー見事!
虹梁は上下2本の二重虹梁。
その虹梁を繋ぐように、中央に1本、左右に2本ずつ合計5本の束。
中央の束のみ上から下まで一直線に走らせ、脇の束は屋根の形に合わせて階段状に配置する。
その束のさらに脇には曲線の美しい海老虹梁(ぐにゃっと曲がった短い虹梁)を架け。
そしてポイントポイントに蟇股(かえるまた)や雲形文様の彫刻を配し、全体に動きを付ける。
アートですな、これはもう完全なアート♪

その本堂の左隣にもお堂があります。
「観音堂」「聖天堂」「護摩堂」を一続きにした建物です。
中には入れないので室内の構成や詳しい様子は不明。
とりあえず覗ける範囲で覗くとこんな感じです。

中央の部屋に「歓喜天真言」と書かれた貼り紙があるので、多分この部屋が「聖天堂」。
左の部屋に「不動明王真言」と書かれた貼り紙があるので、そちらが「護摩堂」。
右の部屋に「観音霊場」と書かれた貼り紙があるので、そちらが「観音堂」、と思われます。
部屋の様子は聖天堂の部分しか分かりませんが、中央に思いっ切り鳥居が見えますね。
お寺なのに神社の設備である鳥居。
仏教と神道の境界が曖昧だった、神仏習合時代の名残りです。
この鳥居の奥に恐らく歓喜天の像なり絵なりが祀られているのでしょうが、ちょっとその辺は暗くて確認できません。

ちなみに歓喜天への供え物は歓喜団(かんぎだん)・歓喜丸(かんぎがん)・酒、そしてなぜか大根を使うのが通例となっているそうです。
なのでお堂の入口上にはこんな彫刻が。
大根です。
なんでこんなトコに大根?と何も知らずに見ると全く意味不明ですが、これは歓喜天への供物を意味しているんですね。
歓喜天についてもっと詳しく知りたい人はググって調べてみてください。
ちょっとエロいニュアンスのある神様です。
大根の形が何気に二股大根になっているのも、そんなエロさを暗示しています。

その本堂の向かいにあるのが鐘楼(しょうろう)。
建立は1851年、大工は山上全之輔吉敏。
大工で山上と言えば、加賀藩の誇るスーパー大工 山上善右衛門がいます。
このブログでも気多大社や小松天満宮、瑞龍寺の記事で登場しています。
恐らくその流れをくむ人物でしょう。
これがまた素晴らしくて。
基壇は亀甲積みの石垣。
素材には戸室石を用い、色もラインも寸分違わずぴしっと揃えられた精巧な造り。
その上の建物は、内転びにした4本柱に大振りな入母屋屋根を備えた吹き放し構造。
もーイケイケのカッコ良さ!
ちょっと下からも覗いてみましょう。

どうですかコレ?
放射状にずばーっと広がる垂木(たるき)のダイナミックさ。
屋根と柱を接続する組み物のガッシリとした力強さ。
軒下に施された雲形彫刻の雄大さ。
木鼻(柱上部から突き出た梁の突端)の獅子の猛々しさ。
隅から隅まで高い技術とセンスがビンビン伝わって来る豪壮な造りです。
素晴らしいぞ!山上一族!
しかし!この鐘楼の面白さはこれで終わりではありません。
ぼーっと見てると気付かない、秘かなギニックがまだ隠されているのです。

それがこれ、軒下直下に施された彫刻。
よーく見ると、四方それぞれに違う動物が配置されています。
四霊獣ですね。
四霊獣とは中国神話において4種類の獣を支配するとされた霊獣で、応竜・麒麟・鳳凰・霊亀とされています。
これとよく似たのに四神獣というのがあります。
四神獣とは青龍・白虎・朱雀・玄武。
朱雀は鳳凰、玄武は亀なので、メンツ的には四霊獣の麒麟と白虎が入れ替わったような形です。
そしてこの四神獣にはそれぞれ守護する方角が割り当てられており、青龍(東)・白虎(西)・朱雀(南)・玄武(北)となっています。
これをそのまま四霊獣に当てはめると応竜(東)・麒麟(西)・鳳凰(南)・霊亀(北)となります。
となると当然これら各彫刻と方角との位置関係が気になってくるのですが、調べてみるとまさにこの方角でピタッと一致。
つまりこれらの霊獣は東西南北から鐘楼を守護している訳ですね。
建物のカッコ良さだけでなく、精霊の力までをも取り込もうというこの感性。
素敵すぎるゼ!山上建築!

面白さいっぱいの西養寺。
特に本堂は本当にカッコイイですので、ぜひじっくりとご覧になってください。
さらに中には「願いが白山にまで届く井戸」やら「目や唇が動くと言われるお釈迦様の画」やら「幽霊ばーちゃんが持ってきたと言われる鉄釜」やらがあるそうです。
いつか機会があればこれらも見せてもらって詳細なレポートを書きたいなーなんて思ってますが。
どなたかここの住職さんとお友達って人、いませんか?
次回はお寺の裏側にあるザ・観音ワールドを見て行きます。
清澄山 西養寺
住所:石川県金沢市東山 2-11-35
TEL:076-252-0532
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