武家屋敷跡 野村家(控えの間~奥の間) 武家住宅、カッコえ~!
2020年03月25日
江戸時代の武家屋敷の空気を楽しめる野村家。
前回は門から玄関までのお話でした。
今回からいよいよ邸内へと話は進みます。
玄関を抜けて左に折れ廊下沿いに進むと、まず最初に出会うのが控えの間。
「控えの間」とはその名の通り、待機のための控室です。
何を待機するのかと言うと、すぐ隣が謁見の間になってまして、殿様が現れるまでの間ここで待機してろ、とそういう部屋な訳です。
そんな場所ですので部屋自体に取り立てて大きな特徴はないのですが、ガラスケースに入れられてこんなものが展示されています。
襖の引手と釘隠し。
恐らくほとんどの人が何も考えずにスルーしてしまうこれらのパーツ。
でもね、金持ちほどこういうどうでもいい所(←?)にこだわるのです。
特にこの屋敷の場合は釘隠しが凝ってまして。
あっと、「釘隠し」って分かります?
文字通り、釘を隠すためのものです。
釘を打つとそこに釘の頭が丸見えのまま残ってしまうので、それを隠すためにカバーをかぶせるのです。
そのカバーを釘隠しと呼ぶのです。
でもただ隠すだけじゃつまんないので、どうせならカッコ良くデコレーションしちゃえと、職人さんがあれこれ技巧を凝らすんですね。
こうして色々なバリエーションの釘隠しが生まれたのです。
実際この屋敷だけでも色んな装飾を施した釘隠しが見られますので、訪れた際にはぜひそんな細かい所にも注意して見て回ってください。
控えの間を挟んで右が奥の間、左が謁見の間。
まずは奥の間から見ていきます。
ここがもう立派でしてね。
部屋の奥手、左に床の間。
形式は正式な本床で、床面は畳敷き。
中央に飾られている掛け軸は、前田家15代目当主前田利嗣(まえだ としつぐ)の書です。
伸びやかな線で書かれたい~い書体です。
なんて書いてあるか全然分からんけど。(←おいっ!)
その下には生け花。
この生け花なんとなーく置いてあるように見えますが、実は位置がとっても重要。
よーく見ると掛け軸は中央にあるのに、生け花は右にズレてるのが分かりますよね?
これは生け花の置き方のセオリーでして、光の位置が関係しています。
この場合は光が左側から来ている格好になっています。
だから光が当たっている面がよりよく見えるよう、わざと右側に寄せてあるのです。
その右隣には床脇。
中央に違い棚を挟んで、上に天袋、下に地袋。
天袋・地袋とは上下の収納スペースの事なのですが、見て欲しいのは扉。
金地です、金地。
ザ・ゴールド!
これはあくまでわたしの推測ですが。
この屋敷の主だった野村家は中級武士。
江戸時代、中級武士がこんな贅沢な装飾を使うのは多分アウトだったはず。
実際この野村家より格上である本多家のお姫様の床の間でさえ、もっと地味に仕立てられています。
なのでこのザ・ゴールドの扉は明治以降に組み入れられたものじゃないかと。
そう思うのですが、どうでしょうね?
奥の間でもうひとつ注目して欲しいのが欄間。
これもイカスのですわ~♪
形式は横から横までびっちりはめ込んだ通し欄間。
中央に仕切り柱を挟み、左右に一枚ずつガッシリと配置。
左は雲間に2頭の像とその後ろにひとりの仙人っぽい老人、右は場所は川岸ですかね?水上に変なポーズの老人、岸辺に荒っぽい牛とそれを御する男性。
一体何を描いたものかさっぱり分かりませんが、多分中国の古典をモチーフにしたもの思われます。
とりわけ印象的なのが陰影の入り具合。
い~い味が出てるのですよ。
横から差し込む光と、彫刻の凹凸とが作り出す光と影のコントラストが見事で。
木の温かな素地と相まって、何とも言えない柔らかさ。
いや~も~。
外して持って帰りたいですわ!(←絶対ダメ)
と、今回はここまで。
江戸期の中級武士の生活振りが垣間見れる野村家の屋敷。
でもよく観察すると、今回指摘した袋棚のように、装飾や構造に不自然さが散見されます。
そしてそれは次回紹介する上段の間・謁見の間にも見られます。
一体どこが不自然なのか?
その辺り、改めて詳しく説明していきます。
関連タグ >> 古民家 古建築 長町武家屋敷跡 武家屋敷跡 野村家
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