
旧中村邸
2019年12月11日

中村記念美術館のすぐ近くに二階建ての古民家が建っています。
旧中村邸です。
どっちも「中村」なのでいかにも何か繋がってそうですが、はい繋がってます。
中村記念美術館の創始者は中村栄俊(なかむら えいしゅん)、石川県の人気地酒ブランド「日栄」の社長を務めていた人です。
酒造業の傍ら美術骨董品の収集にも熱心で、そのコレクションを世に広く見てもらうためにと設立したのが中村記念館です。
そしてその建物として、自宅を移築・提供しました。
それが現在の旧中村邸です。
その後平成元年になって新館が完成し、名前も中村記念美術館と変えてリニューアルオープン。
それまで使われていた旧中村邸は、茶会や講演などのスポット的な利用に回されることになりました。
といったような感じなので、基本的に普段は中は見られません。
有料で利用すれば別ですが。
それがなんか特別に内部公開やりますよ~という情報を聞きつけ。
早速行ってきました。

内部の構成はざっくりこんな感じ。
玄関を入って真っすぐ進むとまず板の間に出ます。
そのすぐ横が座敷。
ここから庭の眺めを楽しめる趣向になっています。

こんな感じね。
庭と言っても奥行きに乏しく、正直ちょっと閉塞感強め。
だけどこの家、移築ですからね。
元々は現在地から車で5分ほどの長土塀ってところにあったそうで、その頃はもっと立派な庭が見られたのかもしれません。

その部屋を抜けると主の間と次の間。
ここは見事でしたよ。
シックで落ち着きのあるブラウンの土壁に、深みと艶の美しい深茶色の柱。
足元には黒縁の畳が整然と敷き詰められ、上部は簡素な棹縁天井。
明かり障子からは真っ白な自然光がさーっと注ぎ込み、柔らかな陰影が静かに部屋を満たす。
抜けのいい、なん~とも居心地のいい空間♪

さらに主の間にしつらえられた床の間。
本床は一段高い蹴込床(けこみどこ)となっており、床面は畳貼り。
左側の床脇との間には間仕切りはなく、簡素な構成。
床の間の部屋と言うと、客室とかちょっとフォーマルな印象がありますが。
ここはどちらかと言えばカジュアルというか、肩の力を抜いて楽しめるような雰囲気になっています。

続いて二階に上がると、いきなりサプライズ!
このふすまです。
これがすごいんですわ!
金!それも下品な金じゃなく、深みのあるちょっとくすんだ金!
これがドガーーーン!!
この奥、何あんの?と思ってこっそり開けようと思ったら、開きませんでした。
屋敷図面で確認するとここは壁だけ。
ふすまの向こうに部屋はありません。
見た目だけかよ!(笑)
とは言え、何度も説明してる通り移築した建物ですのでね。
恐らく移築前はこの先にも部屋があったものと思われます。

そしてこの先がいよいよクライマックスの二階の大広間。
ここの迫力がもう強烈!
いきなり目に飛び込む紅。
壁一面のべんがら色が燃え立つように迫ります。
すさまじいまでのインパクト!
造りは床の間を備えた書院造。
それも一階の簡略化した床の間とは違い、正式な構成を踏まえた床の間。

見ると分かりますが左が本床、右が脇床となっていて、これは「本勝手(ほんがって)」と呼ばれる床の間本来の並びです。
改めて一階の床の間を見ると、これとは逆の並び(この場合は「逆勝手(ぎゃくがって)」)となっています。
理由は多分採光が一階は右から取れるのに対し、二階は左から取れるためでしょうが、一階と二階で「格」の差を付けるためわざとこの形にしたとも考えられます。
脇床は中央に違い棚、上部に袋棚を配置。
これも格式の高い書院造の形。
本床との間には間仕切り壁と床柱がきっちり据えられ、明確に境界を分けています。

さらに部屋の中央上面には見事な彫り物が施された透かし欄間。
この欄間は能の演目「猩々(しょうじょう)」を描いたもので、武田松洋(たけだ しょうよう)の作だそうです。
大きく切り取られた空間の中にうねる荘厳な松の枝。
深みのある木目の光沢。
イケてますわ~♪

明治期の上流階級の建築を今に残す旧中村邸。
中には江戸時代から続く風習なんかも見え隠れして。
現代建築が失いつつある、格調高い日本美の姿を再認識させてくれる素晴らしい場所です。
次回公開はいつになるか分かりませんが、機会があればぜひ訪れてみてください。
関連タグ >> 古民家 古建築
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