
金沢21世紀美術館 人々の国際連合 武装解除時計(企画展示)
2019年11月27日

銃と安全。
銃砲の所持が違法化されている日本にはもうひとつ実感の湧かない話ですが、アメリカなんかでは深刻な社会問題。
「銃があるから安全が確保できる」と「銃があるから安全が脅かされる」という矛盾の狭間で、毎年多くの人が銃によって命を落としています。
果たして銃は正義なのか?悪なのか?
見る立場によって180度意見が変わるこのテーマに、決着がつくことはないのかもしれません。
そんな銃問題をアートとして取り扱った作品がこちら。
『人々の国際連合 武装解除時計』。
現在行われている企画展「現在地:未来の地図を描くために(2019年9月14日~2020年4月12日」に出展されている作品のひとつです。

作者はペドロ・レイエス(Pedro Reyes)。
メキシコ人です。
元々建築を学んでいた人で、その過程において様々な環境問題や社会問題にぶつかり。
それら諸々の問題を世に問うべく、作品制作を始めました。
その流れから生まれたプロジェクトが「Disarm」。
銃を楽器に変えていこうという取り組みです。
メキシコは言わずと知れた銃社会。
ご存知の通り、治安の悪さは尋常ではありません。
銃によって人が死んでいくのは日常茶飯事。
そんな銃の恐怖をなくしたい。
もっと平和で安心して暮らせる世の中にしていきたい。
この作品にはそんな思いが込められています。

見てくださいコレ。
分かります?
なんとこの作品、各パーツが銃で構成されているのです。
材料となる銃は、メキシコ軍が麻薬組織から押収してスクラップ化したもの。
つまり本物。
銃をイメージして作ったイミテーションではありません。
なので、まーリアルです。

どうですコレ?
モロに銃でしょ?
こっそり外して持って帰りたいくらいですわ(笑)。
なんで材料に銃を使ったの?ってことですが。
先に書いた通り、銃社会に対するアンチテーゼですね。
「銃、いらないでしょ?」というメッセージです。
ペドロ・レイエスはこう語ります。
「この銃が、ひょっとしたら今日、あなたの命を奪っていたかもしれない。そんな銃を楽器に変えたい。人の命を奪う道具じゃなくて、幸せを奏でるための道具にしたい」と。
カッコエエですな~。
わたしが女なら迷わずちゅ~しちゃいますわ(笑)。

作品の左上にはこんなものも付いてます。
時計です。
これはいつかやって来る(来て欲しい)世界から銃がなくなる日を目指して時を刻むためのものなんだそうで。
そんな日が本当にやって来るのかは神のみぞ知る、ですが。
だけど奇跡と平和への願いを乗せ、今も静かにひとつずつ時を刻んでいます。
銃がなくなってこの時計が止まる日。
来たらいいですね。

なおこの作品、あくまで楽器です。
なので当然演奏できます。
と言ってもプレーヤーが演奏するのではなく、自動演奏。
15分ごとに突然動き出し、ぱこぱこキンキンとパーカッションのようなでもちょっと金属的な音を出します。
これがなかなか陽気でね。
この辺りはラテン気質とでも言うんですかね。
「銃」という重いテーマを感じさせない軽快なサウンドを奏でてくれます。
どうかご鑑賞の際には、「音」も合わせてお楽しみください。
関連タグ >> 美術館・博物館 金沢21世紀美術館
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